「アウェイクニング」

 

 

「回転」がいかにも英国風のゴースト・ストーリーだったので、似たような傾向で、しかも最近の映画「アウェイクニング」も観てみた。

1921年、第一次大戦後のイギリス。超常現象と呼ばれる出来事のインチキを見破るスペシャリストで、警察の捜査にも協力するフローレンス。ある日、ルークウッド寄宿学校の校長から、校内でたびたび目撃されるという少年の幽霊について調査してほしいとの依頼が舞い込む。さっそく現地へと向かい、調査を開始するフローレンスだったが…。


こういう「インチキを見破るスペシャリスト」という設定を読むだけで、観る前からもうゾクゾクする。ホラーとはこういう理性的な、科学的な、まともな理屈の持ち主をボコボコにしてくれるジャンルなので。

ホラー映画を観たい心理というのは、登場人物が酷い目に遭うのをちょっと喜びたいSッ気と、何者かに自分の存在を脅かされてみたいというMッ気が混ざったような気持ちなので、自分が加害者視点でいるのか被害者視点で観ているのか、それが時々はひっくり返ったりもして、味わいとしては複雑である。

 

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 で、ここからはややネタバレ的なことを書いてしまうと、最後の方で主人公が毒を飲まされて危ない状況になる。そこで幽霊に「解毒剤を持っているので、三階にあるから取ってきて」と頼むのである。幽霊は素直に一階から三階まで一瞬で行って、解毒剤の瓶をきちんと見つけて、すぐまた一階まで戻ってくる。主人公は一命を取り留めるのだが、映画としてはこの時点で死んでいる、と死亡宣告を出すほどではないにしても、ちょっといい加減な設定である。

そもそも「幽霊がいるかどうか」を見破るために来たのだから、解毒剤を持っているのがちょっとおかしい。他にも化学薬品をいくつか所持しているのでそこは見逃すにしても、幽霊が物体としての瓶を持って、また一瞬で戻ってくるのが引っかかる。幽霊が物体をすり抜けたり、移動が素早いのは許容できる範囲だが、瓶も一緒となると話が少し違ってくる。

幽霊は瓶を持てるのか?という疑問は残るにしても、せめて「三階までは一瞬で行く」→「戻るときは階段を通って戻る」くらいの配慮が欲しいところで、人によっては気にならないだろうから、線引きの基準を決めるのは難しい。こういう風に理性の入る余地が出てきてしまうと、せっかくの夢が途中で打ち切られたようで興醒めである。