時々、「自分が食べ物の店を出すとしたらどういう店がいいか」と考えることがある。
前回のそうめんのような、シンプルな食べ物ばかりという店はどうか。
店の名前はずばり「シンプル」。
勿論、看板はなしである。
どこからか聞きつけて来る客のみを相手にしている。
メニューの一番最初が「そうめん」。
注文すると、つけ汁に葱と生姜だけで、具がまったくない。
素材の良さを味わってほしい。
と無言で言っているのだ。
メニューの続きは「梅干し定食」と「漬物定食」。
梅干定食は、ご飯とお吸い物と梅干しだけ。
漬物定食は、ご飯とお吸い物と漬物だけ。
漬物は大根と人参とキャベツの浅漬け。
これでメニューは終り(お冷やとお茶はセルフサービスでお願いしております)。
常連さんには特別に出してもいい裏メニューがあって、それはチャーハンである。
卵、葱、ご飯をいためて、少し醤油をたらすだけ。
従業員は自分のみ、そして音楽はバッハのみ。
「店長、たまには現代的なのも流したら?」
と言われたら、その時だけ仕方なくムスッとした顔でサティでも流しておく。
ちなみに夏のBGMは風鈴だけである。
雪の日は、雪の降る音だけが聴こえる店である。
以上。