以前読んだ本には「フランク・キャプラを思わせる人情喜劇」 みたいなことが書いてあって、ビデオのパッケージには「坪島孝 監督は日本のビリー・ワイルダー」という謳い文句が書いてある映画で、クレージー映画関係で唯一の谷啓主演作品である。
遊星アルファから地球を平和にするために派遣された宇宙人、 ミステイクセブンが谷啓で、アドバイスする先輩の宇宙人が藤田まこと。
私は藤田まことがコメディ映画に出ているのを始めて見た。ギンギラギンの衣装を着て、なぜか大阪弁で、ストリップを見に行って興奮し、ストリッパーと一緒に踊ったりする。
「俺がこんなに踊れるのは……、あたり前田のクラッカー!」
と言ったりはしないものの、怪演という言葉がぴったりである。
他にもヒステリックな社長夫人の塩沢ときとか、歌っている最中に下痢になるチンピラロックンローラーが内田裕也とか、今の目で見るとなかなか興味深い。
しかしキャプラ、ワイルダーと比較するのはいくら何でも無理がある。
で、国会で「平和法案」なるインチキな法案を通そうとしている際に突然現れて、その場をメチャクチャにひっかきまわす男が植木等。こういう風に真面目くさった場に現れて無茶な事を言い出して暴れる植木等には、神々しささえ感じる。
「そもそも平和とは!」
などと演説を始めると、実にしびれる。
この部分には落ちがあって、実は植木等はチョメチョメから逃げてきたフニャフニャであった、というもの。
全く他人の言う事をきかない植木に、
「総理!先進国首脳会議がもうすぐ始まります!お迎えのお車が参りました!」
と言うと、
「ウム、わかった」
と大人しく車に乗って去って行くのであった。
植木等はここだけのゲスト的な出演で、この場面だけ猛烈に映画が立ち上がるような迫力とおかしさがある。
おそらく、この映画を観る人は読者の中にはいないだろうからラストについて書くと、谷啓がポロリと涙をこぼすのである。
それを見た少女が「おじちゃん、泣いてるの?」と言う。
これには何か古典的な元ネタがあるような気がするのだが、何だかわからない。
すぐに思いつく類例は内田春菊の「南くんの恋人」と、夢枕獏の「魔獣狩り(鬼哭編)」で、いずれもラストに似た場面が出てくる。
1. 主人公が泣いている顔をはっきり見せない(小説の場合は描写しない)。
2. それを見た通りすがりの子供や第三者が、主人公の泣き顔を指摘する。
3. 作品全体がそこで終る。
こんな感じである。
「それ、元ネタから全部知ってるよ!」
「他にもこういう例があるよ!」
という人がいたら教えてください。