特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
「青春の一冊」というお題が出ている。
サリンジャーとか太宰治とか、そういった種類の甘くて切ない、カルピスソーダのような読書体験の思い出話が求められているようだ。そういう経験に乏しい私が中高校生の頃に愛読していた青春の書といえば、例えば夢枕獏の「魔獣狩り」(特に最初の三冊)や、
西村寿行の「去りなんいざ狂人の国を」や、
半村良の「石の血脈」や、
栗本薫の「魔界水滸伝」や、
菊池秀行の「魔界行」、
などであった。いま思えば、刺激が強すぎていかがなものかと自分で自分に注意したい気もする。しかし「魔界水滸伝」がきっかけでクトゥルー神話を知り、その流れで雑誌「幻想文学」を読み始めたりもしたので、教育的な効果もあることはあったのである。
狼のレクイエム 第2部 (角川文庫 緑 383-55 ウルフガイシリーズ)
- 作者: 平井和正
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1982/08
- メディア: 文庫
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この手の小説は「青春」という言葉の持つイメージとはかけ離れているが、平井和正のウルフガイ・シリーズだけは青臭さと瑞々しさとがあるので、やや強引だが「青春の一冊」と言えるかもしれない。特に「狼のレクイエム」の第一部と第二部には思い入れが強い。後に第三部も書かれるのだが、作者本人ですら同じレベルの続編は書けないものであるという貴重な教訓を得た。
当時は「CIA」という組織がよくわからず、英和辞典には「米中央情報局」とだけしか書いていないのでますます意味不明で、この小説では極悪人の集団かマフィアにしか見えなかった。