「キューポラのある街」を三十数年ぶりに観直す。
主人公ジュン(吉永小百合)の父親が向上をクビになるという冒頭からテンポがよく、最後まで飽きる暇がない。
ジュンが睡眠薬を飲まされる辺りや、朝鮮へ帰ってゆくサンちゃんのまさかの展開は、何となく覚えてはいたもののハラハラして引き込まれる。
東野英治郎が職人気質で呑兵衛の父親役で、とにかく困った時も怒った時も、楽しい時も悲しい時も、何でもいいからとにかく酒、酒、酒の人である。
「てやんでえ組合なんざ頼れるか、アカの世話になんかなるか」
「女、子供は引っ込んでろイ」
「また戦争でも始まりゃア、景気がよくなる」
「お前なんか感化院行きだ」
と、今ならツイッターが炎上しそうなことしか言わない人物で、たまに金が入ると賭け事ですぐに失う。
見ていてヒヤヒヤするくらいだが、何がどうなるとあの夫婦からジュンが生まれて出て来るのか、まったく手品のような親子である。
(↓続く)