「告訴せず」

 

 

選挙資金の怪しい大金をついつい持ち逃げしてしまう平凡な男、それが青島幸男なので親しみやすい。

 

 

そして温泉旅館でいい仲になってしまうのが江波杏子。昔は着物の女性は全員おばさんに見えたものだが、この映画が75年で1942年生まれということは当時33歳!当時の言葉で言うならピチピチギャルではないだろうか。

 

 

他にも水戸黄門にしか見えない西村晃、何となく誰からも軽んじられている頃の樹木希林、若くて痩せている渡辺文雄、アナウンサー役で出て来る徳光和夫、怪しげな祈祷師の天本英世、不動産業が似合う小松方正など、顔や姿を見るだけで嬉しくなってくる。

 

 

で、最終的には黒幕が出て来ることは出て来るものの、伏線の張り方が下手すぎて、逆に意外性が出ているという珍品だった。インタビューで監督自身があれこれ言っているが、この人の存在をカットしてもそこそこ成立する話なので、さほど気にならない。

それにしてもたまに松本清張の作品に触れると、ワサビや唐辛子の入りすぎた食べ物を食べた後のようで、心身共にしゃっきりする。