先日、と言っても一ヶ月ほど前にエフケータックさんが「インクジェット」のことを「インジェクット」と言い間違える人のことを書いていてビックリした。
実は私も、それと同じ言い間違いをする人のことを書こうと思っていたからである。
その人は郵便局に勤めているお客様で、私は時々その人を通して葉書や切手をまとめて買っているのである。
葉書と言っても、たとえば暑中見舞い用であれば、その中にまた色々と種類がある。くじつきとか、寄付金つきとか、絵柄つきとか、無地のインクジェット用など。
それで私がインクジェット用を買った時に、その人が言い間違えて、
「はい、インジェクット用を百枚ね」
と明らかに言い間違えたので、普通なら聞こえないふりをするところだが、特に指摘しづらい人でもないので、
「インクジェットですよ」
と軽い感じで間違いを正した。
しかしその人は、
「ん?いま何て言ったっけ?」
といった調子で、あまり間違いを間違いとも思っていないようであった。
その後もその人が反省した様子はなく、単に「インク」と「ジェット」の足し算でできている単語なので間違えなくてもよさそうなものだが、その後でもまた「インジェクット」と言っていた。
世の中にはそういう人もいるのだと妙に感心して、そのうちブログに書こうと思っていたら、先に書かれてしまったのであった。
その頃は単に「こういう言い間違いをする人がいるのは不思議だ」とだけ書くつもりだったのだが、よくよく時間を置いて考えたら、自分も頻繁に言い間違いそうになる言葉がいくつかあることに気づいた。
たとえば将棋のタイトル戦の中継でよく「羽生は脇息にもたれてじっと考えている」という表現が出てくる。
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この「脇息」は「きょうそく」と読む。背の低い、和風のひじかけのことである。
それを百も承知で、なぜか自分は「わきそく」とか「そくわき」と読みたくなってしまう。これはどういう訳かとにかく頭の中でそうなっているので、説明がつかない。だからインジェクット氏のことも実はあまり笑えないのである。
将棋用語でもう一ついうと、盤面の両サイドの筋のことを「端」と言って、この筋の歩のことを「端歩」と呼ぶ。
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この読み方には何故か「はじふ」と「はしふ」の二通りあって、昔から自分は「はじ」と言われると妙な感じがする。
どちらが間違いという訳でもなさそうだが、
「端歩攻め」のことを「はじふぜめ」と言われると、
脳内では、
「恥婦責め……」
と、背表紙の色が黒い文庫本のタイトルのように変換されてしまい、たいへん落ち着かない。
NHK杯の解説の人が、
「このタイミングで、恥を突いて、責めてきましたね」
などと言ってニヤニヤしながら、
「どうなんでしょう、集中的に恥を責めてくるというのは」
「責める前に、こうやって味つけしてからですね……」
「叩いて、取って取って」
「そして恥を突くと……」
「もう丸裸ですね」
といった調子で会話が続くこともあるので、たまらない気分になる。
勝手にこっちが聞き違えているだけの話だが、
「こういう所にも将棋の面白さがある!」
という結論をいきなり出して、この記事の結びとしたい。