予測変換短歌 その3

 

 

きっかけになるような単語を二つほど決めて、予測変換で出てくる単語のリストから選んで言葉の連なりを作る。

それを五七五七七になるような、ならないような、意味があるようなないような微妙な線でまとめる。これが予測変換短歌である。

今回は鑑賞文をつけてみた。

 

夜は冷えようでないので気をつけて

行ってきますのご連絡

 

【鑑賞】おそらく今夜は冷えるようだ、いやそうでもないかもしれない。そう考えて「気をつけて」と送り出す。母親か、妻か。言われた子か夫は「行ってきます」と応じるが、今の時代においては、互いに口で言うのではなくメールかLINEで伝えるのである。

 

 

十通りの人たちがいるチャンさんの

誕生ケーキは絶対的に

 

【鑑賞】「張(チャン)さんの誕生日になると、必ず十人のさまざまな人たちが絶対に来るんだよね。しかも朝から来て、まだかまだかって、誕生日のケーキが届くのを待っているんだよ」と嘆いている。

 

 

族によって「なるけど」今日から採るところ

天から見てくる俺だけを

 

【鑑賞】暴走族に入らないか?と勧誘しているが「なるけど……(むにゃむにゃ)」と歯切れの悪い若者が数名いる。人気のない族の場合は手間がかかるものだし、時期的にも今日からそろそろ採用しないと人数が減ってしまう一方だ。それにしても天から神様が、採用・勧誘担当の俺だけをじっと見ているような罪悪感を少し感じているところなのさ。

 

 

つもり貯金のジャンルによってどうなのか

気になる方かとされている

 

【鑑賞】つもり貯金にも多様なジャンルがあるものだ。つもり銀行の担当者は「つもり貯金ビッグ」や「つもりワイド貯金」を勧めてくるが、ジャンルによってどうなのか?好き嫌いがあるのか?そういうことを気にする方か?と、こちらを決めつけて探っているかのようだなあ。

 

 

深夜です短い鳥居を傾けて

まー充分なのであれでいいかなと

 

【鑑賞】いま、何時くらいかなあ?と思っていると、すかさず「深夜です」と、もう一人が答える。そんなやりとりをしている二人は、そろそろ鳥居を傾ける作業(いたずら)の終わりが近いことを感じている。「まー充分なのであれでいいかなと」。二人は仕事にそこそこ満足して、そそくさと逃げ去る。

 

 

愛犬の耳にする気があるとされ

ずっと見ていたときのころから

 

【鑑賞】「お前のこと、うちで飼っている犬の耳にしようかと思ってるんだよ」と、いきなり言われてしまった。何と、ずっと前からこちらを見ていた、あの時のころから……!?