数年ぶりにミクシィのアカウントを見てみたら、すっかり忘れていた「落語日記」を発見した。
2009年から何十回か書いている。結構きついことも書いているものの、記録として面白いので数回分ずつ転記してみたい。今回は1回目から5回目まで。最初は2009年の10月30日である。
↓
最近落語のCDを聴く習慣がついたので、落語関係の本を読んだりCDを聴いたりした際の感想のメモ代わりにこのスペースを使ってみよう。
今日は「柳家小さん/話芸の魅力1」というCDの「長者番付」「たらちね」を聴いた。
これは「長者番付」の方が面白かった。デタラメを言う江戸っ子の話。小さんは話がいつもスローな気がするが、いつもすぐに慣れる。
その後で髪を切りに行ったら店の人に「笑点」の人が亡くなったらしいですよと言われて、ああ円楽のことだなと思った。帰って確認したらやっぱりそうだった。
↓
今日は「ほぼ日」に落語のことが書いてあったので、コピペしておく。
立川志の輔さんの赤坂ACTシアターでの高座、
というより落語のライブに行ってきました。
新作、古典、実験作、とすべて趣向をかえた三席で、
すっかり満足して帰ってきました。
落語はいいなぁ。
法律の世界では「判例」っていうのが、
とても大事なジャッジの要素になるらしいけれど、
ぼくは「落語全集」を、
判例とおなじように考えればいいのにと思いますね。
「こういう場合は、こう考えるのか」とか、
「こういうとき、人はこういうことをしてしまう」とか、
「この噺のなかで、こう語られている」というふうに、
こころのモノサシとして使えるでしょう、と。
ま、階級というものがあったり、
色街があったりした時代が描かれているものですので、
いまの倫理や習俗に合わないところは、
足したり引いたり割引したり、ということも、
多少はあるのでしょうけれど、
「町の人」が、なにを許して、なにを許さないのかが、
よくわかると思うんですよね。
志の輔さん、年齢が高くなるほどに、
挑戦している目標が高くなっているようで、
ほんとに見事なものだなぁと思います。
「だれか、止める人はいないんですか?」と、
冗談を言ってきたのですが、尊敬するなぁ。
でもね、落語ですからね、
どこまでも「すごくなる」というのは、
ほんとの目標じゃないとも言えるんで、
いまくらいの愛嬌のある「すごさ」で、
のんびりやっていってほしいです。
でもなぁ、談志さんの弟子だからなぁ‥‥。
・円楽さんが他界されました。
落語のことを書こうと思ったら、このニュースでした。
なんだか、毎年、おなじくらいの数の人が生まれて、
おなじくらいの数の人が亡くなっているのでしょうが、
なんだか、今年は、別れが多すぎる気がします。
↓
ツタヤで落語のCDを借りて聴いていると、そのうち誰の何をいつ聴いたのか忘れそうなので、メモしておく。
今回は10月末頃に聴いた5枚。
柳家喬太郎落語集 「アナザーサイドvol.1」
これは創作落語で、「東京タワー・ラブストーリー」という話があまり面白くなかった。
声が急に大きくなってうるさかった。
「今日は録音しているのに、寄席の近くで工事をやっていて云々……」という枕も何が面白いのかよく分からないが、客席はドカスカ笑っていた。
もう一つ、乱歩の「赤い部屋」を落語にしたものも入っていたがそっちは聴かなかった。
春風亭昇太1「権助魚」「御神酒徳利」
話がせわしなかった。
枕は特に面白いことを言っている訳でもなく、時事ネタ的に「実は自分も年金の一部が未払いでした、どうもすみません」と言って、それで客席は大喜び。
しかし、「権助魚」も「お神酒徳利」もいざ本題に入るとメリハリがあって面白かった。
特に「権助魚」は一種の叙述トリックのような面もあるが、最初の喋る解説部分で言ってしまっているのでさほど驚かなかった。冷たいようだが「ああそうですか」という程度のものだった。
小さん「話芸の魅力3 御慶 / 強情灸 」
「御慶」は柳屋小さん演じる江戸っ子の面白さ全開で、はしごの夢を見た、だから数字にすると845の数字のクジを買いたいという身勝手さが面白い。それをひっくり返す易者の理屈も面白い。
「強情灸」も声だけで充分面白かった。石川の浜の真砂は尽きるとも、むべ山風を・・とデタラメにつなげるのもいい。
桂文珍(1)「後生鰻/七段目」
文珍は枕の話が絶望的に退屈だった。聴くのが苦痛。
「アナウンサーがこういう言い間違いをしていた」とか。
しかし、本題の古典落語の部分は明快で分かりやすい。
「後生鰻」はあまり人がやらないという話だったが、面白かった。
「七段目」は歌舞伎の知識が必要。
志ん朝「三枚起請」「お若伊之助」
「三枚起請」は身請けの約束をしたはずの女の証文が三枚もあったという話。つまり三人に嘘をついていた女がいて、とっちめてやろうという流れになる。ここから華麗な復讐劇が始まってもいいと思うのだが、特にそうはならない。志ん朝は聴きやすい。
「お若伊之介」は美男美女の組み合わせの「お若」と「伊之介」とを別れさせた筈が実はコソコソ密会をしていて……という話。それを伊之介が「隠れて会ってなどいない」と否定するので、現代で言うアリバイ崩しのような形になる。
しかし現代ミステリのアリバイ崩しとは大いに異なる方向に話がヒョイと進み、聴いていてガクッとなる。真犯人も真相も全く現代風の話ではなく、その過程の面白さが主眼。
↓
「柳家小さん 落語名人集」というDVDの感想。
演目は二つで「禁酒番屋」はCDで聴いたこともなかった。
これは酒を飲むことを禁じられている状況下で、何とか酒を届けるためにあれこれと苦心する酒屋の話。
カステラのふりをして持って行こうとすると、番屋の見張りに怪しまれる……、という辺りのスリル、その後の展開もベタだが面白かった。
最後の一言は、藤子不二雄の「モジャ公」の「自殺フェスティバル」という回を想起した。
落語を聴いていると随所に藤子不二雄っぽさを感じる。と言うか藤子不二雄は落語が好きだったのだろうなと思わせるネーミングは多い。権助とか。
「藤子不二雄 落語」で検索してみると「寝床」との関係について指摘するものが多い。
「富八」は先日CDで聴いた「御慶」と全く同じ話だった。
タイトル違いで同じ噺というのもあるらしい。CDで聴いてもDVDとして身振り手振りつきで観ても、印象がほとんど変わらないということは大きな発見だった。
↓
CD「志ん朝復活-色は匂へと散りぬるを は」の感想。
志ん朝のCDを聴くのはこれで2枚目だが、この間の「三枚起請」「お若伊之助」が大変よかったので、かなり期待して聴いた。
まず「酢豆腐」は冒頭の、昼になっても寝ているグータラな男の寝起きの様子が可笑しくて、ここでかなり引きこまれた。続く「酒の肴」に関する会話のあれこれも秀逸。気障な若旦那の喋り方も愉快。
次は「鰻の幣間」で、これは枕の部分がやや長い。長いからよくないという意味ではなくて、長いのが嬉しい。
たいこ持ちともう一人の人物のほとんど二人しか出てこない話だが、移動があって(店に入って二階へ進んでまた一階、また出るという)飽きさせないよくできた話。
どちらも面白かった。ついでに「花は志ん朝」という本も読んでほぼ全て理解できた。というか「わからない」と思うような箇所は無かった。
とにかく志ん朝は音楽的にきれいで、聴いていて心地よい。そして噺が分かりやすい。
もっと基本的な円生、文楽、小さんをよく聴いてから志ん朝を聴こうと思っていたのだが、志ん朝はどういう段階で聴いてもいいように思えてきた。
むしろいつ頃聴いていいのか、頭の中で順番を決めかねるのは小三治で、ツタヤにもあまり置いていないし、図書館にも無いしで困った。