井上ひさしの「戯作者銘々伝」の中の何作かを読んでいたら最後の話は三笑亭可楽が語り手で、その師匠のそのまた師匠が平賀源内という関係になっていて、落語が今のようなスタイルになってゆく発生の瞬間を捉えたような話だった。
最初に出てくる合戦物の部分がよかった。 講談の合戦物の文体模写に、借金の催促、取立てを引っ掛けたもの。出てくる人物のネーミングがナンセンスでいい。
平賀源内作ということになっているが、実際には井上ひさしの創作なのか、ちゃんと本物があるのかその辺の微妙なところがよく分からない。後で調べてみることにする。
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志ん朝「佃祭」
志ん朝「搗屋幸兵衛」
ツタヤで借りた志ん朝のCDはもう何回も聴いて、そろそろ新しいものが聴きたいので『落語名人会19志ん朝11』他二枚ほどを買った。
まず「佃祭」は「葬式に死んだ筈の人がひょっこり現れる」系とも言うべき、ちょっと「大山詣り」っぽい噺。
枕と落ちも綺麗に決まって、昔の風習、季節感、人情味、長屋の連中の様子、奥さんが焼餅焼き、与太郎のバカバカしさ、といった様々な要素のバランスのよさが光る。
1.『佃祭』<つくだまつり> 出囃子「三下がり中の舞」~マクラ[2:21]
2.『佃祭』<つくだまつり> 女房のやきもちを背に佃島行き[3:12]
3.『佃祭』<つくだまつり> 思いがけないめぐりあい[8:36]
4.『佃祭』<つくだまつり> 水難を免れた次郎兵衛[8:51]
5.『佃祭』<つくだまつり> 悔みの脱線口上~弔いの準備[15:16]
6.『佃祭』<つくだまつり> 次郎兵衛生還の波紋[5:09]
7.『佃祭』<つくだまつり> 与太郎の発心~サゲ~追い出し[2:17]
次の「搗屋幸兵衛」は長い回顧談があって、結局どうなるのかと思わせてサッとお終いになる、割とあっさりした噺。
8.『搗屋幸兵衛』<つきやこうべえ> 出囃子「梅は咲いたか」~マクラ[3:18]
9.『搗屋幸兵衛』<つきやこうべえ> 小言の幸兵衛[7:03]
10.『搗屋幸兵衛』<つきやこうべえ> 搗米屋の入来[2:25]
11.『搗屋幸兵衛』<つきやこうべえ> 長篇回顧談の始まり[2:36]
12.『搗屋幸兵衛』<つきやこうべえ> しあわせだった新世帯の頃[4:08]
13.『搗屋幸兵衛』<つきやこうべえ> そこに異変が起きた[3:14]
14.『搗屋幸兵衛』<つきやこうべえ> 義妹との再婚、そして重なる不幸[4:24]
15.『搗屋幸兵衛』<つきやこうべえ> 真相判明~サゲ~中入り[2:13]
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「じょしらく」の付録の落語CDを聴くのを長い間ためらっていたが、今日ようやく聴いたのでその感想を書いてみると、全体的に危惧していたほど退屈なものではなく、むしろ面白かった。
噺が二つ入っていて、演者も別々。最初は饅頭こわいをもじった噺で、AKB48の小野恵令奈という子が喋っている。
この子の声が全体にひしゃげた声で、しかも鼻をつまんでいるのかと思うほどの鼻声、で聞きにくいかというとそうでもなく、個人的には少しも嫌ではなかった。
噺の内容は、ひたすら空気の読めない男の子が何故かモテモテで、女の子とのやり取りが色々と行き違うというもの。ラブコメ調で、ちょっと落語モードの頭で聴くと絵が浮かびにくい。
しかしアニメや漫画をラジオドラマ化したものを聴いているつもりで聴くと、非常にくっきりした絵が浮かぶので、多分頭の中の違う場所を上手く使い分けることができないといけないんだろうなと思った次第。
第二話は「寿限無」のもじりで、女の子の赤ちゃんに名前をつけようということになって、ライトノベルやアニメのヒロインの名前を色々と足した名前を付けようとする騒動が描かれる。
こちらはちゃんとした声優の人で、しかも落語風の節をつけて喋るので聴きやすいし、産まれたての赤ちゃんを見て
「うわあ、可動部分が多いよ!」
「タミヤのプラカラーで言うと何番の色かな?」
といったプラモデル好きのオタク的発言が面白くて、一気に
引きこまれた。この辺りはもっと広げる事ができそうなので、
名前の話に持っていくのが勿体無いくらいだった。
という訳でどちらも面白かった。もしフラリと寄席に入って、
前座の人がこういう話をしたら結構受けるんじゃないかと思う
ほど。
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来年うちの近所に春風亭小朝が来るので行くことにした。
席は、チケットぴあで探したら前から四列目で一番右端だった。
席の良し悪しは特に気にならないが、小朝の弟子で春風亭ぽっぽちゃんという人のことが忘れられないので、前座として是非来てほしい。
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桂米朝のCDで「こぶ弁慶」「鉄砲勇助」などを聴いた。
「こぶ弁慶」は最後の落ちの意味がよく分からなかった。
「鉄砲勇助」の方はホラ吹きの話で、関東の方では志ん生が「ヤジロウ」という題名でやっているのと同じ噺だと思う。
・北海道に行くと寒いので小便が凍る
・猪を退治する
・火事が凍る
・鴨の足元が凍るので引っこ抜いてつかまえる
など、同じだが最後に「大阪の嘘つきが嘘つき村に行く」というエピソードがオマケのように付いていて、ここが関東には無くて面白かった。
嘘つき村に行くと嘘つき日本一の男が居るので、そいつと勝負したいのだが嘘つき村の住民たちは嘘ばかりつくので、教えてくれない。
やっとその人の家に着くと子供しかおらず、父は出かけている、母も出かけているという。
その理由が「富士山が倒れそうだから支えに行った」「竜宮城の乙姫様の洗濯を手伝いに行った」など、嘘ばっかり。
客を追い払った子供の所に出かけていた父親が戻ってくるが、「親がいないときはいる、いるときはいないと言うのが嘘つきの本道なのだから、バカ正直にいないときにいないと言う奴があるか」と怒る。
このあたりが山場で、最後にまたちょっと子供が見事な嘘を言ってお終い。
やはり嘘や騙しの話は面白い。聴いていて司馬遼太郎の本に載っていた小噺を思い出した。
注:「司馬遼太郎の本に載っていた小噺」については以下の記事に書いた。