落語日記 46-50

 

 

今日はまた志ん朝のCDで、「寝床」「刀屋」を聴く。

「寝床」は文楽、談志のを聴いているので、何も新しい発見はないかなと思っていたが、充分楽しめた。
登場人物の一人一人が明確で、少し誇張されており、喜劇的。

「寝床」で好きなのは、あまりに酷い義太夫語りの声のせいで、刺身の色が変わっただとか、「伏せろ!」といって頭を下げる談志版だが、志ん朝は、その前の段階の被害者の様子で土蔵が出てくる辺りがメチャクチャ盛り上がる。

 

 

「刀屋」は、主人公が思い詰めて「あの女を斬る!」ということになって刀屋に行って、その主人とのやりとりが面白い。そう心配している様子でもなく、半分からかっているような調子で話している所がハイライトか。

この噺はよく考えると無差別殺人ではないにしても「殺人を思いとどまらせる」噺なので、教育的効果ということで考えると色々と考える種を与えてくれるかもしれない。

今年はここまで。国立演芸場で観た分の感想は来年書く。

 

 

年末年始の落語関連の記録を一応書いてみると、正月番組のうち「笑点」は少し見た。芸能人の親子、関東と関西の落語家といった組み合わせで大喜利をやっていたのは退屈。
タレントや女優と組んでやっていたやつはまずまず。
しかし番組冒頭いきなり「私はスキーが大スキー」みたいなことを言っていたのはきつい。ほとんど言葉の暴力とすら言える。

CDは小三治の「死神」を聴いた。
これはペースがゆっくりだという点が他と違う印象。最後の方は知っていたのでさほど感銘を受けなかった。
内容や細部を知っていても面白い場合と、知っていて退屈な場合の差というものはどこで生じるものなのか、まったく不思議に思う。

そしてDVDでついに「ちりとてちん」の後半を観た。
後半は結婚や師匠との別れ、そして出産まで。母親との関係で最後に盛り上がる。落語の話は余り出てこなかった。

 

 

都筑道夫「読ホリデイ」の上巻を読んでいたら、落語の話題が幾つか出てきたのでそれについてメモしてみる。


まず一つ目は、ジャンル違いの作家がミステリを書くこと(例えばアシモフのミステリ)を、歌舞伎や新派の役者が落語の独演会をやるようなもので、語り口が上手いのだからそれはそれでよいではないか、というもの。

二つ目は江戸の言葉をマスターするには、という話題の中で、半七捕物帳、「人情紙風船」と並んで桂文治(先代)の落語を勧めたいというもの。文楽、志ん生、円生よりも会話がずっといいとのこと。

三つ目は「落語のピン」という90年代のテレビ番組で志らくが「死神」のサゲに独自の工夫をしていたというもの。これは文章で読む限りでは確かにしゃれた落ちになっている。

だがしかし、志らくはどうも好きになれない。キネ旬の連載、その他の文章も余りよろしくないと思う。

 

都筑道夫の読ホリデイ 上巻

都筑道夫の読ホリデイ 上巻

  • 作者:都筑 道夫
  • 発売日: 2009/07/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 
それからこの本の中で何箇所か、「あつあつのご飯」は江戸の言葉ではないのに、小朝や志ん朝まで使っているということで批判している。

また、ミステリや映画を評する際に落語の「三年目」のあらすじを書いたりしているので、下巻も読んでみようと思う。

都筑道夫の兄は若くして亡くなった噺家だということも書いてあった。これは以前どこかで読んだがすっかり忘れていた。

 

 

「落語ファン倶楽部」で、落語の登場人物に関する特集があって、それをパラパラ読んだ。昇太のインタビューで、落語の中の追い詰められ方のパターンあれこれについて解説したものが面白かった。

 

落語はお笑いというより一人芝居に近いということを誰かが言っていた(確か談春)。その見方で行くと、お笑いっぽくて一人芝居的なものとして柳沢慎吾の出しているCDは見逃せない。

甲子園や警察をテーマにしたものが出ていて割と評判が良いようだが、落語かと言うとやはり違う。

 

 

別に落語でなくてもいいので、これはちょっと聴いてみたい。

 

あとは「人情紙風船」を観直したり、「寝床」を聴き直したりした。「寝床」はこれまでに文楽、志ん生、志ん朝、談志のものを聴いたが、手っ取り早く比較できる表のようなものが欲しい。

 

 

今日は文楽、志ん生、志ん朝それぞれの「寝床」で、最初に旦那の義太夫の会を欠席する人(とその理由)のリストを作ってみた。さらに店の人の仮病のリストも作ってみた。

途中で飽きるかと思ったが、やってみたら面白かった。やはり志ん朝の仕事の丁寧振りが光る。
そして何と言っても、志ん生の「待てーー!」というあの瞬間。ここは何度聴いても素晴らしい。

その後で談志の「幇間腹」をDVDで観たが、集中できず。

しかし談志の言うイリュージョンというのはさほど凄いと思わない。ただ駄洒落的に固有名詞を並べても仕方がない。それなら初期の野田秀樹の演劇の方が百倍凄いと思う。

「この手のイリュージョンは志らくが継げ」なんてことを解説で言っていたが、どうもこの系列に関してはつき合いきれそうもない。

口直しにモンティ・パイソンの第一シリーズの第一話を観た。こっちの方がすんなり入っていける。