日本史のビジネス教訓化

 

 

前回は「無味乾燥な文章ではなく、少しは個性的な文章で書かれた本がいいよね~」と書いたつもりであった。

その後、たまたまブックオフに寄ったら出口治明の「ゼロから学ぶ日本史」があり、読んでみるとこの人自身の声が文章に沁み込んでいる。

いかにもこの人の体温、感情、個性が漲っている文章である。

 

 

しかし……。

平清盛は中世日本のジョブズ」といった、いかにもビジネスマン向けのキャッチコピーと見立てに満ちているのであった。

この種の書き手にとっての信長は「創造的イノベーションを牽引するリーダー」であり、秀吉は「上司も部下も魅了する! 人心掌握術の大家」、家康は「長期安定企業の名誉会長」になり、史上のあれもこれも現代の企業組織に当てはめて、長大で複雑なはずの歴史をお手軽なビジネス教訓に変換してしまう。

これもまた、巨大な「日本史ビジネス」市場の一角をなしている代表的な本なのであった。