いつも「何でもベスト10」ばかり書いているので、たまには「打線」を組んでみたくなってきた。
という訳で、今回は日本語の誤用打線を紹介してみよう。
1中:よく
「よく喫茶店に行きます」という場合、「良く喫茶店に行きます」とは書かないのが普通である。これを変換ミスか何かで「良く」としているケースをよく見かける。
「しょっちゅう、しばしば、頻繁に」という意味の副詞は「よく」である。
「成績が悪くなって、その後で良くなった」は「良い(←→悪い)」という形容詞の「良い」の連用形の「良く」である。
2遊:さわり
「さわり」は「冒頭」「導入」「最初」を示す言葉ではない。音楽や物語の最も盛り上がる部分、話や文章の要点などを指す。
3左:すべからく
「すべからく」の誤用はいつまで経っても減らない。呉智英の指摘が有名だと思っていたが、いつの間にか呉智英の名前も顔も誰も知らないような世の中になっている。
この誤用に関する治療法として、一番のお勧めは澁澤龍彦の「すべからく」という短い文を読むことである。ケラケラ笑いながら相手の急所をグサグサと刺すような軽妙さが素晴らしい。「太陽王と月の王」に収録されている。
こちら↓も参考にどうぞ。
4捕:圧巻
全体に対して優れている一部分を指すのが正しい用法だが、「圧倒された」「壮観」というべき場合に使われている。これは前後関係抜きで「圧巻のピッチング」「圧巻の大自然」と使われるからではないか。とりわけ新聞の見出しや広告などに多い。
分厚い本の厚さや重さを強調して「まさに圧巻!」と書いているのを見たこともある。
5一:爆笑
大勢で笑うことを爆笑というのであって、一人では爆笑とは言わないらしい。しかし、最近は一人の爆笑もありとされているようである。
自分はもともと間違った使い方をしていたので、「一人は誤用なのか」と納得した。ここからまた逆戻りするのはかえって面倒くさい。
6右:かけがい
「かけがいのない日々」と使われているのを見て心底から驚いた。小説家へのインタビューのタイトルだったからである。正しくは「かけがえ(掛け替え)」で、普通に変換される言葉をなぜ間違えるのか、過程がよく分からない。
7二:ひもとく
「ひもとく」も利口ぶって使うケースが目につく。使わなきゃいいのにと私は思うのだが「不思議をひもとく」「謎をひもとく」はかなり多くて気味が悪い。「DNAをひもとく」になると頭痛がしてくるが、これも多い。
8三:敷居が高い
「不義理や面目のないことがあって、その人の家へ行きにくい」という意味で、高級料亭や超高級レストランに入りにくいという使い方は誤用。
9投:永遠と
これも最初に目にした時は驚いたが、今や珍しいとも感じなくなった。「延々と」と耳で聞いて、漢字を勝手に当てはめているらしい。
粗雑な文章で有名な「リアル鬼ごっこ」には「永遠と続く赤いじゅうたん」という表現が出てくるとのこと。