落語日記 26-30

 

 

今日はDVDを二枚観た。
いずれも面白い部分もあり、退屈な部分もあり。

落語の極 平成名人10人衆 柳家権太楼「不動坊火焔」「お神酒徳利」

この人のインタビューを中心とした本を読んで、随分と自信満々な人だと思ったが、期待以上に面白いというほどでは無かった。
と言ってダメという訳でもない。

 

落語の極 平成名人10人衆 柳家権太楼 [DVD]

落語の極 平成名人10人衆 柳家権太楼 [DVD]

  • 発売日: 2009/08/05
  • メディア: DVD
 

 

「不動坊」は小さんのやったものをCDでつい4,5日くらい前に聴いた。前半は色々と細かい部分で膨らましていて愉快。後半はやや無理がある。
「お神酒徳利」も以前別の人のやるのをCDで聴いた。さほど新味はなく、一番客席が喜んでいたのが「ズバリ言うわよ!」という細木数子のマネだった。これは残念。


落語の極 平成名人10人衆 橘家圓蔵「大山家の人々」「寝床」


圓蔵は枕が結構面白かった。「大山家の人々」というのは全体が思い出話、雑談であってあまり落語の面白さとは関係がなさそう。

 

落語の極 平成名人10人衆 橘家円蔵 [DVD]

落語の極 平成名人10人衆 橘家円蔵 [DVD]

  • 発売日: 2009/09/02
  • メディア: DVD
 

 

「寝床」も枕の桂文楽の思い出話がよかった。

「俺はもう怒ったぞ、テレビだったら字幕が出てるぞ『俺は怒ったぞ』って」

という所は可笑しかった。

DVDに少しだけインタビューが入っていたが「落語は自分で終わりだと思う」と暗い顔で言っていた。
「いま若い人で人気のある人もいるけど、そのうちメッキがはがれる」と厳しいご意見。

 

 

CDで志ん生「大山詣り」「甲府い」を聴いた。

その後で有名な圓生の「文七元結」。
これは50分近くある長丁場で、しかも筋は大体知っているのでどうかなと思ったが、所々涙が目に滲むくらい引きこまれた。

 

圓生百席(39)文七元結/へっつい幽霊

圓生百席(39)文七元結/へっつい幽霊

  • アーティスト:三遊亭円生
  • 発売日: 1997/11/21
  • メディア: CD
 

 

圓生の江戸言葉はいい。何となくこちらもそういう調子が移って、

「まあまあ、一杯(いっぺえ)やっつくんねェ」

とか言いたくなる。


読んだ本では、寄席のネタ帖の分析の本を図書館からまた借りて読んだ(二度目)。あとは「この落語家を聴け」という本をパラパラ眺めた。

それより平岡正明の落語の本を読み直すと、最初に読んだ時は意味不明だった部分がかなり理解できるようになっているので楽しい。
視野が桁違いに広く、他の落語本、批評が色褪せて見える。

名人クラスの人の中では、文楽はやや落ちるような気がしていたが、平岡正明はまたちょっと比重の置き方が違うので面白い。

 

 

「文七元結」「包丁」の二つを聴いただけなのに、すっかり円生(圓生)の世界に魅了された。

そこで早速「落語ファン倶楽部」の圓生特集号とその前の大ネタ特集号を読んでみた(まだ聴いていない演目に関する記事はヒョイヒョイ飛ばしつつ)。

 

落語ファン倶楽部 Vol.7 (CD付)

落語ファン倶楽部 Vol.7 (CD付)

  • 作者:笑芸人
  • 発売日: 2009/06/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

普通なら「無駄の多いのは下手な落語、無駄を切り詰めたのが大名人」となりそうなものだが、現役の人気落語家たちが異口同音に「圓生の落語は無駄な部分が多いのに見事だ」と語っている。

「文七元結」に関しては、一年待つところを二年にしてみたとか、登場人物の誰それに焦点を当て直したとか、演出に関する話が良かった。

思うに演劇等で「舞台で水や鏡を使った」「照明と音楽に工夫を凝らした」「男の役をみな女性に変えてみた」みたいな話を聞いてもさほど心が動かされない。おそらく自分が心のどこかでそれを小手先の技と見做しているからだろう。

落語は派手なやり方が通用しないだけに、本来の筋や人物像を本当に見極めないといけない。その分だけ大変そうだが、説得力がある。

音源案内にビクターの七枚組のものが無かった。
自分はビクターのCDボックスセットで聴いているが、音も演目の選び方も他と比べて遜色ないと思う。これから残りを聴くのが楽しみ。

圓生特集の内容は以下のようなもの。

 

六代目三遊亭圓生 てへっ!

落語家が語る「圓生、その芸」
三遊亭鳳楽╱大“師匠”圓生の教え
立川志の輔╱圓生師匠は憧れの存在、圓生落語は閃きの源です
立川談春╱何をやっても上手い。それが圓生なんです
柳亭市馬╱間に合ってたら、いろんな唄を教わってたでしょうに
立川志らく╱実は、人情噺より滑稽噺の方が好きだったのでは…
柳家三三╱圓生師匠の人情噺ほど会話の妙を感じさせてくれるものはない
古今亭菊之丞╱何かにつけてたよりになるのが圓生全集
瀧川鯉昇╱軽い噺で照れ隠しの「てへっ」あのいたずらっぽさが大好き
三遊亭遊雀╱落語家歴は二十年ですが圓生歴はまだ一年なんです
立川生志╱『文七元結』における時間経過の繊細な描写に刮目!
三遊亭白鳥╱『札所の霊験』に俺の悲惨な思い出がシンクロ!
柳家喬太郎╱ 型から入って内面にいってリアルなのが三遊亭
三遊亭圓丈╱直弟子が明かす、三遊亭の芸の伝承
三遊亭圓楽╱天下の圓生、我が師匠

圓生グラフ╱「圓生代々」矢野誠一╱圓生自ら、十八番を語る
╱プライド高き江戸の華 圓生語録╱圓生の遺した原稿「にわか真打ちを叱る」(1978年8月『文藝春秋』)╱川柳川柳  圓生しくじり噺╱「ドキュメント御前口演」圓生と劇作家・宇野信夫の挑戦╱圓生 音盤リスト

 

 

落語のDVDを何枚か観た。

まず新作落語のやり手として有名な白鳥という人の新作。
これは非常につまらなかった。話の内容以前に「話をする」のが下手なので、どうしようもない。

健康を害するくらい酷い。

こういうのを観ると「すべらない話」は話の内容も話術もテレビ番組のゴールデンタイムで放映され、DVDにもなって多くの人に鑑賞されるレベルだなと思う。

次は古今亭菊之丞。
この人は「短命」だけ観た。
聴きやすい声なので、CDも聴くかもしれない。
いかんせん「短命」自体が平凡な噺なので何とも言い難い。

あと「棒だら」は観ずにインタビューだけサーッと観た。
そこで「棒だら」は東北の田舎の人ではなく、九州の人が出てくる噺だと言っていた。
自分は完全に東北の人だと思い込んでいたので勉強になった。


次は談志。
一枚のDVDに二つの噺が入っていて、一つは滑稽噺、もう一つは人情噺か大ネタという構成なので、交互に鑑賞すると丁度よい。

「やじろう~南極探検」
「寝床」
「権兵衛狸」
「芝浜」
「饅頭怖い」
「文七元結」
「堀の内」

という順番で観た。92~95年くらいのライブで、どれもみな満足。
特に「寝床」は過去の名人クラスの人のやり方や演出を解説しながら取り入れるので、「『寝床』の歴史」「『寝床』論」でもある。

その後、車の中で円生の「鼠穴」「三年目」。
「鼠穴」はどんな内容の噺か知らなかったので楽しめた。「文七」「芝浜」の親戚のようなストーリーだった。

 

 

今日は小三治の「子別れ(中)」を車の中で聴いた。

ここ何日か、平岡正明の落語の本を読んでいるので、そっちの方へ頭が行きっぱなし。